スミスマシンは「甘え」なのか?

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「スミスマシンは甘え」という言葉を聞いて、トレーニングのやる気を少し失っていませんか?ジムでスミスマシンを使っていると、フリーウェイト(バーベルやダンベル)で力強く鍛えている人からの視線が気になるかもしれません。

しかし、結論から言えば「スミスマシンは甘え」というのは大きな誤解です。トレーニングの目的やその日の体調、個人のレベルに応じて役立つ優れたマシンなのです。

まずは、なぜスミスマシンが「甘え」と言われてしまうことがあるのか、その理由と、それがどうして誤解であるのかを詳しく見ていきましょう。

なぜ「甘え」と言われる?主な3つの理由

スミスマシンが「甘え」と見なされがちな背景にはバーベルやダンベルを使うフリーウェイトトレーニングとの比較があります。

理由1:軌道が固定されているから

スミスマシンの最大の特徴は、バーがレールに沿って動くため、軌道(バーの動く道筋)が固定されている点です。

フリーウェイトのように、バーが前後左右にふらつくのを自分でコントロールする必要がありません。この点が「楽をしている」「簡単そうだ」と見なされる原因のひとつになっているようです。

理由2:バランス維持(安定筋)が鍛えられない?

フリーウェイトで重いバーベルを持ち上げるとき、私たちは無意識に体を安定させようとします。このとき、「スタビライザー」と呼ばれる体幹やインナーマッスル(体を支えるための筋肉)がたくさん使われます。

軌道が決まっているスミスマシンでは、バランスを取るための筋肉への刺激が少ないと指摘されることがあります。

理由3:フリーウェイトこそが「本物」という先入観

特にトレーニング経験が長い人や、重さを競うパワーリフティングを行う人の中には、「自分の力だけでバーベルをコントロールするフリーウェイトこそが本物のトレーニングだ」という考えを持つ人もゼロではありません。

そうした考え方から、補助的な機能(軌道の固定)を持つスミスマシンを使うことを「甘え」と捉える風潮が生まれた側面もあるでしょう。

それでも「甘え」ではない!スミスマシンの正当な評価

「甘え」と言われる理由は、実はスミスマシンが持つ独自のメリットの裏返しでもあります。トレーニングの効果が劣っているわけでは決してありません。

安全性の確保:限界まで追い込める

スミスマシンは軌道が固定されているうえ、セーフティフック(ストッパー)という安全装置がついています。万が一、重さを持ち上げられなくなってもバーが下敷きになるのを防いでくれます。

補助をしてくれるパートナー(スポッター)がいない状況でも、一人で高重量に挑戦したり、「オールアウト」と呼ばれる限界回数まで力を出し切ったりできます。これはフリーウェイトにはない大きな利点です。

ターゲット部位への集中(アイソレーション)

バランスを取るために余計な力を使わなくてよいため、意識をすべて「狙った筋肉(主働筋)」に集中させられます。これをアイソレーション(分離)と呼ぶこともあります。

例えば、スクワットで太ももの前(大腿四頭筋)にしっかり効かせたい、ベンチプレスで大胸筋に集中したい、といった場合に非常に有効です。筋肉を大きくする(筋肥大)目的において、とても合理的なマシンなのです。

フォームの習得(初心者・リハビリ)

トレーニングを始めたばかりの人がいきなり高重量のフリーウェイトを扱うと、ケガのリスクが高まります。スミスマシンは、正しいフォームの「軌道」を体に覚えこませるのに役立ちます。

フリーウェイトでの基本動作(スクワットやベンチプレス)を学ぶ前の導入として、またはケガからのリハビリテーションとして使うにも適しています。

スミスマシンの注意点と活用術

スミスマシンは、正しく使えばあなたのトレーニングを助ける強力な武器になります。「甘え」という言葉を気にせず特性をしっかりと理解し、効果を最大化する使い方をマスターしましょう。

スミスマシンならではの注意点

便利なスミスマシンですが、その特性ゆえの注意点も知っておく必要があります。

軌道が合わないリスク

スミスマシンの軌道は、製品によって「垂直(まっすぐ上下)」または「少し斜め」に固定されています。この決まった軌道が、使う人の骨格や関節の自然な動きと合わない場合もまれにあります。 無理に動作を続けると、膝や肩、腰を痛める原因になりかねません。もしトレーニング中に違和感があれば、スタンス(足の位置)や手幅を調整し、それでも改善しない場合は無理をしないことが大切です。

フリーウェイトへの移行時に注意

スミスマシンで100kgを扱えたとしても、それがそのままフリーウェイトのベンチプレスで100kgを扱えるという意味にはなりません。

スミスマシンに慣れすぎると、フリーウェイトでバーを安定させるために必要な筋力が育っていない場合があります。その状態で急にフリーウェイトに移行するとフォームを崩したり、ケガをしたりする恐れがあるのです。

もしフリーウェイトに移行する際は、はじめのうちはスミスマシンでの重量より大幅に軽い重量から始め、ゆっくりと慣らしていくようにしてください。

スミスマシンで効果を高める代表種目

スミスマシンのメリット(安全性・アイソレート)を活かせる、おすすめの種目を紹介します。

スミスマシン・スクワット

  • 特徴:通常のスクワットより足の位置をバーより前に出しやすいのが特徴です。上体を起こしやすくなり、お尻(大殿筋)や太ももの前(大腿四頭筋)に効かせやすくなります。
  • ポイント:バランスを気にする必要がないため、深くしゃがみやすい利点があります。腰への負担を減らしながら下半身を鍛えたい人にも有効な種目です。

スミスマシン・ベンチプレス

  • 特徴:バランス維持をマシンが助けてくれる分、大胸筋の収縮に意識を集中しやすい種目です。
  • ポイント:補助なしでも限界まで追い込めます。セーフティバーを、バーを下ろしたときの胸の高さより少し上に設定しておけば、安全に高重量のトレーニングが可能です。

スミスマシン・ヒップスラスト

  • 特徴:お尻を集中的に鍛えるのに非常に効果的な種目の一つです。
  • ポイント:フリーウェイト(バーベル)で行う場合、重いバーを骨盤の上にセットしたり、動作中のバランスを取ったりするのが難しい面があります。スミスマシンなら軌道が安定しているため、高重量でもお尻の筋肉(大殿筋)だけに集中して負荷をかけられます。

まとめ:スミスマシンも賢い選択のひとつ

スミスマシンは「甘え」ではなく、安全かつ効率的に筋肉を鍛えるためのツールです。

フリーウェイトでしか鍛えにくい要素(バランスを取る安定筋)があるのは事実ですが、スミスマシンでしか得にくいメリット(安全性・高強度での追い込み・特定の部位への集中)も確実に存在します。

大切なのは、他人の目を気にして「甘えかもしれない」と不安になることではありません。自分の目的(筋肥大させたい、筋力を上げたい、安全にフォームを覚えたい)を達成するために、その日に最適な器具を選ぶことです。

それぞれのマシンの特性やトレーニング方法を正しく理解し、自身のトレーニングメニューに賢く取り入れて理想の体づくりを目指しましょう。

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